ビタミンB1誘導体フルスルチアミンとビタミンB1の心臓での集積の違いを発見
- 2018年4月2日
当社は、このたび、国立研究開発法人 理化学研究所との共同研究*により、ビタミンB1誘導体フルスルチアミンとビタミンB1の心臓での集積の違いを発見し、本研究成果が米国の科学雑誌『Molecular Imaging and Biology』(3月20日付け)に掲載されたことをお知らせします。
本研究では、炭素の放射性同位体(炭素11:11C)で標識したフルスルチアミン(ビタミンB1誘導体)とチアミン(ビタミンB1)のラット生体内での薬物動態をPET(陽電子放射断層画像撮影法)で可視化し、ラット体内、特に心臓での[11C]フルスルチアミンと[11C]チアミンの集積について検討しました(図1)。
その結果、[11C]チアミンはほとんど心臓へ集積しないのに対し、[11C]フルスルチアミンは投与直後から高い集積が認められました(図2)。また、心臓に集積した[11C]フルスルチアミンはただ集積しただけでなく、エネルギー代謝に利用されるチアミン-2-リン酸という形に変換されていることも判明しました。
フルスルチアミンは、医療用医薬品では「ビタミンB1の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される心筋代謝障害」の効能を有しており、今回の知見はそれを裏付けるものです。今後、疲労をはじめとしたフルスルチアミンの様々な効果に関して、本研究成果の活用が期待されます。
原論文情報:
Nozaki S, Mawatari A, Nakatani Y, Hayashinaka E, Wada Y, Nomura Y, Kiytayoshi T, Akimoto K, Ninomiya S, Doi H, Watanabe Y.
“PET imaging analysis of vitamin B1 kinetics with [11C]thiamine and its derivative [11C]thiamine tetrahydrofurfuryl disulfide in rats”
Mol Imaging Biol (2018). doi: 10.1007/s11307-018-1186-y
https://link.springer.com/article/10.1007/s11307-018-1186-y
http://rdcu.be/JvWc
*(理化学研究所 研究グループ)
ライフサイエンス技術基盤研究センター
生命機能動的イメージング部門
健康・病態科学研究チーム
- ■チームリーダー 渡辺 恭良(わたなべ やすよし) (センター長)
- ■副チームリーダー 和田 康弘(わだ やすひろ)
- ■研究員 野崎 聡(のざき さとし)
- ■テクニカルスタッフ 中谷 友香(なかたに ゆか)
- ■テクニカルスタッフ 林中 恵美(はやしなか えみ)
標識化学研究チーム
- ■チームリーダー 土居 久志(どい ひさし)
- ■技師 馬渡 彩(まわたり あや)
図1:11Cで標識したフルスルチアミンとチアミン
図2: [11C]フルスルチアミンと[11C]チアミンの心臓での集積の違い
[11C]フルスルチアミン(上段)および[11C]チアミン(下段)をラットの尾静脈から投与し、直後よりPET撮像しました。矢印の部分が心臓にあたります。カラーバーは薬剤の集積量を表しています。